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【保存版】プロが教えるFX取引に重要な5つの判断材料をわかりやすく解説! その5:実質実効為替レート

こんにちは、STAMです。今回はFX取引の際の重要な判断材料の5つ目、実質実効為替レートについてご案内します。

 

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重要指標⑤:実質実効為替レート おすすめポジション:中長期ポジション

(重要指標1:IMM投機筋ポジション 重要指標2:基礎収支 重要指標3:内外金利差 重要指標4:ボラティリティ指数

 

1. 為替レートの価値とは

そもそもの話になりますが、為替レートはあくまで通貨ペアの交換レートですから、そのレート自体に価値はありません。今の米ドル円のレートが1ドル=110円であろうが、1ドル=240円であろうが別にどちらでもいいのです。相対価値ですから、現在のレートが過去と比べてどう変化したかが重要であり、120円や240円などといった水準自体には意味はないのです。

そして、為替市場にはたくさんの通貨ペアがあり、ひとつの通貨ペアだけを見て特定の通貨の(相対的な水準感としての)割高・割安を判断することは難しいと言えます。例えば米ドル円で見た場合、円安ドル高が続いていれば「円は安くなったな」と感じるかもしれませんが、もしかすると円はユーロや英ポンド、オーストラリアドルなどの他通貨に対しては、円高が進行しているかもしれません。その場合、全体としてみれば「円高」という表現が正しいでしょう。

では、円を対米ドルだけではなく、対ユーロ、対英ポンド、対オーストラリアドルなど幅広い通貨も含めて評価する方法はないのでしょうか?実はあります、それが実効為替レートです。

 

2.(名目)実効為替レート((Nominal) Effective exchange rate)

(名目)実効為替レートとは、特定の通貨について1つの通貨ペアとしてではなく、幅広い通貨に対して相対的な割高・割安を示すものです。具体的には、日本円の場合、円と米ドルやユーロなど幅広い通貨の為替レート(つまり、米ドル円やユーロ円)を両国の貿易取引量で加重平均したものを集計して計算します。この実効為替レートを見ることで、特定通貨の相対的な割高・割安を確認することができます。ただし、この実効為替レートはインフレが考慮されていない数値であり、インフレを考慮した実効為替レートのことを実質実効為替レートと言います。

 

3.実質実効為替レート(Real Effective exchange rate)

先ほどの実効為替レートでは、幅広い通貨に対する特定通貨の相対的な割高・割安を確認することができましたが、この実効為替レートにインフレ分を考慮したのが実質実効為替レートです。では、なぜインフレの考慮が必要なのでしょうか。

ドル円を例に考えてみましょう。1ドル=100円、日本のインフレ率が2%、米国のインフレ率が0%とします。この場合、1年後のインフレを反映された両通貨の価値は、1ドル×(1+0%)=1ドル、100円×(1+2%)=102円 とドルは変わらず、円は2円分増加しています。仮に1年後の為替レートが1ドル=102円だとすれば、1年分のインフレが考慮された為替レートになっていますのでインフレ調整は不要ですが、仮に1年後の為替レートが1ドル=100円のままだとすれば、手元に102円あるけど、100円で1ドルが手に入るわけですから、円が2円分強くなっていると言えます。つまり2円分の円高です。この2円分の円高を実効為替レートを計算する際に考慮したのが、実質実効為替レートです。

 

4.実質実効為替レートをグラフで確認

それでは、実際に各通貨の実質・名目実効レートおよび主要通貨ペアのグラフを見てみましょう。2000年末を100としたグラフです。ちなみに実効レートはBISのHPから取得できます。Effective exchange rate indices

 ※以下グラフはすべて2016年2月末時点までのデータ

 

(1)日本円

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ここ数週間では大幅に円高が進んでいますが、対米ドル(青線)で見ると、現在の水準(2016年2月末)は2000年末と同レベルにあります。一方、実質実効為替レート(緑線)を見ると、2013年から大幅な円安水準で推移していることがわかります(グラフの表示期間次第では見え方がかわる場合があります)。

ちなみに、〇印をつけた箇所は、2015年6月に日銀の黒田総裁が、「ここからさらに実質実効為替レートが円安に振れるということはなかなかありそうにない」と発言したタイミングです(当時のドル円レートは1ドル=125円程度)。

 

(2)米ドル

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こちらは米ドルです。興味深いのは2000年代の米国はドル高容認姿勢でしたが、実際には実質・名目実効為替レートともに概ね下落基調で推移していたことです。この期間はユーロが対ドルで一本調子に上昇していましたので、そちらが大きく影響しています。また、2014年末からは利上げ期待の高まりなどを背景に急速に上昇しています。

グラフ(2016年2月末迄)には反映されていませんが、ここ1-2ヵ月の間、米ドルは弱含んでいます。FRB複数理事は4月利上げの可能性にも言及していますが、イエレンFRB議長がハト派寄りの発言をしたことで、現時点(4/10)ではFF先物から見る利上げ確率は年内1回も無いかもしれない程度となっています。このような環境から、市場では「2014年以来の急激なドル高は終焉した」とのような言葉も聞こえてきます。

確かに米景気が減速・後退し、利上げどころではないという話になれば素直にドル安が一段と進行するでしょう。ただし、個人消費・住宅市況に支えられ安定した経済成長が続き、緩やかながらも一定のペースでの利上げが必要となる場合、金融政策の方向性の違いが意識されやすい状況が想定されるため、過度なドル安目線には慎重になりたいところです。

 

(3)ユーロ

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ユーロは、リーマンショックまでの景気拡大局面においては上昇基調でした。その後は欧州危機などで軟調な展開となり、直近では複数回の追加緩和政策によって下落基調が続いています。ただ、それでも2000年末と比較すると、全てのグラフ(EURUSD、実効為替レート、実質実効為替レート)においてプラス圏にあります。

 

(4)豪ドル(グラフのみ)

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(5)英ポンド(グラフのみ)

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(6)カナダドル(グラフのみ)

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(7)ブラジルレアル(グラフのみ)

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(8)中国元(グラフのみ)

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5.終わりに

今回は実質実効為替レートをご紹介しました。BISのデータ公表にタイムラグがあることもあり(実際、今回も最新データは2016年2月末)、短期的な分析にはあまり参考になりません。一方、中長期的な観点では、その通貨が現在どのような水準にあるのかを客観的に把握する手段として、大変有用です。ですので、これまでご紹介してきました他の4つの重要指標と併せて活用することで、FX取引のパフォーマンス向上につなげていただければ幸いです。最後までご覧いただきましてありがとうございました。

 

 STAM

 

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