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【トピックス】日銀のマイナス金利は予想できた!? 直前に繰上償還手続きが開始されたMMFにヒントが

こんにちは、STAMです。今日は引き続き日銀のマイナス金利について触れたいと思います。マイナス金利については既に概要編、上級編を書いていますので、興味のある方はそちらをご覧ください。

<概要編>

money-and-finance.hatenablog.com

<上級編>

money-and-finance.hatenablog.com

 

そして今日はタイトルのとおり、日銀のマイナス金利政策を事前に予想することが出来た!?かもしれない事実についてご案内します。「そんなことあるのか?インサイダーだろ?」と思いますが、少し機転を利かすことができれば、十分予想できる事実がありました。

さて、既に以前のブログでご案内のとおり、今回のマイナス金利政策によって、銀行が新たに預けた日銀当座預金額に対して-0.1%の金利が適用されることになります。市場金利は新たに適用される金利水準を意識するため、今回の政策により金利水準が全体的に下がりました。今日、2月1日時点では先週末から更に低下し、約9年金利までがマイナスに沈み、2年金利はなんと-0.15%程度まで低下するなど、ものすごく金利が低下しました。(個人的には2年金利の-0.15%はさすがに行き過ぎに感じますが)

こういった状況になると、特に困る投資信託があります。それはMMF(マネー・マネジメント・ファンド)など、償還までの期間が短く安全性の高い債券などで運用するファンドです。残存期間の短い債券の金利マイナス金利導入により大きく下がってしまい、先ほどのとおり2年金利は-0.15%です。2年金利-0.15%を具体的にイメージしてみると、2年国債を100万円分買ったら、途中の利子も含めて2年後に99万8500円を受け取るという感じです。そんな債券やファンドは買うわけないですよね。ファンドは満足な運用が出来なくなります。ということで、日銀がマイナス金利を導入した29日以降、MMFを運用する運用会社は相次いで自社MMFの追加購入申込の受付を停止しました。以下、ご参考まで。

headlines.yahoo.co.jp

ちなみに、ユーロ圏は日本に先んじて2014年にマイナス金利を導入しましたが、マイナス金利の導入以前から市場金利はドイツを中心に一部でマイナスとなっており、ユーロ圏の短期債券の運用が困難となっていました。そして日本でもその影響を受け、2012年あたりには相次いでユーロ建てMMFが繰り上げ償還となりました。ファンド残高が大きい場合は繰上償還に対するハードルが高まる傾向にありますが、幸運にもユーロ建てMMFは残高がそこまで大きくなく、繰上償還が比較的スムーズにできたため、運用会社各社は自社のユーロ建てMMFの繰上償還を進めました。

さて、ここまでくれば、この後に私が何を紹介するかイメージできた方も多いと思います。そうです。日本においても、このマイナス金利導入の少し前に、MMFの繰上げ償還を決定したファンドがあったのです。それがこちら。

「大同のMMFhttp://www.tdasset.co.jp/fund/MMF/?s=12216

大同のMMFは、2016年4月28日に繰上償還するため、2016年1月15日からファンド保有者に対して是非を問う手続きを急に開始していました。こちらのファンドは残高が150億円以上と一定程度の残高を持つファンドであるため、何か特別な運用上の制約がない限り償還することは考えにくく、更にはこのファンドの取扱会社である新生銀行においては、同行の上位ステータスを取るための条件のひとつを満たす商品として人気商品であるというように、顧客にも支持されているため、急な償還には疑問符が付きます。日銀のマイナス金利導入前までは、短期金利は多少のマイナスの状況でしたが、当座預金に対する付利は0.1%、金融機関同士で短期に資金を融通する市場(コール市場)の金利水準も0.05%程度、政府保証債や地方債などもプラス利回りでしたので、MMFの運用が極端に難しい状況ではありませんでした。

そのような状況の中で、同ファンドが急きょ償還手続きを開始することはどうしても理解しにくいのです。そこで、逆に考えてみますと、サプライズが大好きな黒田総裁が国会で「考えていない」と発言していたマイナス金利政策がもしかしたら導入されるので、運用が事実上難しくなることを想定しての事前の繰上償還か?と想像を膨らますことも機転が利けば出来たかもしれません。

ちなみに、日銀は今回のマイナス金利導入の前に、事前に銀行やMMF等を運用する運用会社にヒヤリングをしたものと思われます。そうでなければ、29日のマイナス金利政策決定の2時間後の15時に、MMFを運用する大和投信が追加申込停止の文章を自社HPだけではなく、同ファンドを取り扱う金融機関のHPでも公表するということは、まずもって不可能でしょう。ですので、おそらく大同MMFにも事前にマイナス金利に関するヒヤリングが入る中で、運用継続が困難と判断し、前もって繰上償還手続きを開始したのではないでしょうか。ということが今回の政策の裏側でしょうか。

もう一つ、加えて言うなら、金融政策発表の10分くらい前に、日本経済新聞電子版で「日銀、マイナス金利導入を議論」というヘッドラインが流れました。先進国の金融政策が発表前にもれるという大変恥ずかしいことで、あり得ません。おそらく世界からも失笑されているでしょう。しっかりとやってもらいたいところです。

 

※このブログはマネーライフ講座「皆さんのお金にまつわる不安を解消する」ことを目的としています。マネーライフに関するブログもたくさんエントリーしておりますので、ぜひそちらもご覧いただけますと幸いです。

 

STAM