【トピックス】日銀、株価下落によりETFで約4,000億円の含み損!? 日銀のETF買入の拡大推移と損益状況について
こんにちは、STAMです。今回はトピックスとして、日銀が金融緩和政策の一環として2010年よりスタートしたETFの買入れについて、その損益状況を見てみましょう。
<今回のブログのポイント>
- 日銀は金融緩和政策の一環として2010年より国内株価指数に連動するETF(上場投資信託)の買入れを開始。2013年以降、量的・質的金融緩和のもとで買入ペースは拡大
- 試算結果では、最近の株価下落により、2015年末時点で1.5兆円以上あった利益が消え、一転して4,000億円近くの含み損となっている
- ETFでの損失により日銀バランスシートが毀損した場合、中央銀行の信用性維持のために損失補てんが実施される可能性があるが、その損失補てんには税金の投入が濃厚
1.日銀のETF買入の拡大推移
日銀は、2010年10月の金融政策決定会合にて、国内株価指数に連動するETFの購入を決定しました。2013年3月20日に黒田総裁が就任すると、2013年4月4日の就任初回での金融政策決定会合で量的・質的金融緩和の実施を決定しました。従来の金融政策は金利でのコントロール(無担保コール翌日物)としていましたが、黒田総裁は金融政策をマネタリーベース、つまり量でのコントロールに変更しました。量的・質的金融緩和政策の決定を受け、ETFの買入金額も拡大しました。2010年のETFの買入れ開始から直近までの買入枠の拡大推移は以下の図のとおりです。
※政策決定日における追加額は、決定日後から一定期間までの買入額を示しており、決定日時点での残高とは異なることに注意
2.ETF・J-REITの損益状況を試算
日銀が日次公表しているETFの買入実績をもとに、日銀のETF損益状況を試算してみました。試算にあたっては以下の前提をおいているため、あくまで概算数値となります。
<前提>
- ETFの買入金額は、日経平均株価・TOPIX・JPX400に均等投資されるものとする
- ただし、JPX400は2013年8月末から公表された指数のため、それ以前の買入金額については、日経平均株価とTOPIXに均等投資されるものとする
- ETFの買入価格は、買入日の各株価指数の終値で代用することとし、特定のETFの価格は使用しないこととする
試算結果は以下のとおりです。
損益試算結果は下方の色付の数値をご覧ください。直近(2/12)時点では、ETFで▲4,000億円程度、J-REITは+550億円程度となっています。参考として2015年末時点の数字も載せていますが、2015年末時点ではETFは+1.55兆円程度でしたので、この1カ月半で約2兆円も評価減となったことになります。
では、もう一歩進めてみて、更に現状から株価が20%下落した場合を計算してみましょう。以下の表をご覧ください。
なんとETFの損失額は1.8兆円を超えます、相当な損失ですね。ETF(株式)が怖いのは、債券のように発行体がデフォルトしない限り満期保有すれば元本が返ってくるというある種の保証がない点です。そういう意味もあってか、現状、世界の主要中銀は債券こそ積極的な買入れを行っていますが、ETF(株式)の積極的な買入れは見受けられません。
3.損失は誰の責任か
さて、少なくとも日銀は現時点で4,000億円程度の含み損を抱えているわけですが、この損失はいったい誰の責任でしょうか。今後、日銀がETFで更に大きな損失を出しバランスシートが毀損した場合、中央銀行の信用性維持のために損失補てんが実施される可能性があります。実施される場合、その補てんには税金の投入が濃厚でしょう。以下のロイター記事にも、日銀ETFの損失に関する責任について言及されていますので、ご参考にどうぞ。
〔クロスマーケットアイ〕荒れ始めた日本株市場、日銀ETF買いめぐり思惑交錯 | Reuters
ちなみに、直近の日銀のバランスシートにおける資本は3兆円程度ですから(BS全体は400兆円規模)、4,000億円程度の含み損には耐えられるレベルにあります。ですが先例のように、ここから更に株価が20%下落した場合は1.8兆円程度の含み損となりますし、もしも40%下落した場合は3.2兆円程度の含み損となり、資本の3兆円程度を上回ってしまいます(←FXや先物取引でしたら、強制ロスカットされるレベルですね。)
もしも実際にこのような状況となった場合、損失補てんをするのでしょうが、税金が投入されれば、「日銀・政府は何やってんだ!」と思う国民は多いでしょう。その際、日銀・政府はしっかりと説明責任を果たせるのでしょうか。ロイター記事でも言及されていましたが、少なくとも損失補てん等の対応策について事前に枠組みなどを固め、説明責任をしっかりと果たせる体制を構築したうえで運営していただきたいと思います。
4.終わりに
今回は、中国人民元・株価安から始まった年初からの株価暴落によって、日銀ETFの損益状況がどの程度の影響を受けているかを見てきました。最後までご覧いただき、ありがとうございました。
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