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【保存版】プロが教えるFX取引に重要な5つの判断材料をわかりやすく解説! その2:基礎収支

こんにちは、STAMです。今日は前回の続きとして、FX取引に重要な判断材料の2つ目をご案内します。前回のブログをご覧になられていない場合は、是非ご覧ください。

重要材料②:基礎収支 おすすめ:中長期ポジション

IMM投機筋ポジションに続く、2つ目の重要材料は基礎収支です。2月1日の日経新聞記事では、為替を動かす材料の1つとして経常収支を挙げていました。基礎収支とは経常収支と同じような考え方ですが、経常収支を更に一歩すすめたものになります。では、まず基礎収支の前提知識となる国際収支について確認しましょう。

1.国際収支とは

国際収支とは、一定期間の日本と外国との経済取引すべてを体系的に記録したものです。以下の表で全体感をつかみましょう。

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国際収支統計IMFマニュアルに沿って公表されますが、日本では2014年よりマニュアル第6版に沿って公表されているため、それ以前と分類項目が異なっています(これまでの大項目の資本収支は変更されています)。上図では第5版と第6版の変更箇所を矢印で示していますので、併せてご確認ください(さらに詳しくは日銀HPをご覧ください)。

2.基礎収支とは

一般に、基礎収支とは「経常収支+直接投資と言われます。為替市場への影響を考えた場合、国内に入ってくるお金の合計(外貨を円に替える金額の合計)よりも国外に出ていくお金の合計(円を外貨に替える金額の合計)が上回れば、それだけ自国通貨安の圧力が強いということになります。先ほどの国際収支の項目ごとに為替に与える影響を確認しましょう。 

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ここで重要な点は、その収支が近い将来に逆流するかどうかです。もし近い将来に逆流するようであれば、為替市場への影響は相殺されてしまいます。ですので、その収支が❝行きっぱなし❞かどうかが重要です。

この❝行きっぱなし❞の収支である基礎収支(経常収支と金融収支のうち直接投資の合計)を追うことで、為替市場における基礎的な需給を把握しています。なお、金融収支のうち直接投資とは、外国企業の経営権を取得することなどを目的に行われる投資であるため、❝行きっぱなし❞の収支になります。他方、金融収支内の証券投資、金融派生商品などの項目は、短期的な投資つまり近い将来に逆流する収支が含まれているため、純粋な❝行きっぱなし❞の収支ではないため、基礎収支には含めていません(※)。
(※)基礎収支に含まない証券投資などの項目を分解し、❝行きっぱなし❞とカウントできる収支を基礎収支に加算し、広義基礎収支として分析する場合があります。

3.各国の基礎収支状況

各国の経常収支、直接投資は世界銀行HPから取得できます(参考ですが、各国のマクロ指標等については、世界銀行またはIMFで横断的に取得することが可能です)。
 経常収支:http://data.worldbank.org/indicator/BN.CAB.XOKA.CD
 直接投資:http://data.worldbank.org/indicator/BN.KLT.DINV.CD

 それでは、さっそく日本の基礎収支を見てみましょう。グラフのプラスは基礎収支が黒字=外貨を多く獲得していることを意味し、将来的な自国通貨高圧力となります。

◆日本

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日本は2000年以降は安定した経常黒字国(一次所得収支(海外からの利子・配当)、貿易収支の効果が大)でしたが、2011年の東日本大震災後は資源の輸入がかさみ、基礎収支も悪化。それでも、足元では輸入の一定割合を占めるエネルギー価格の大幅下落により貿易収支が改善してきており、結果的に基礎収支も改善してきています。

以下、ユーロ圏・英国・オーストラリア・カナダ・米国についてもグラフを掲載しますので、ご覧ください。

◆ユーロ圏(グラフのみ)

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◆英国(グラフのみ)

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◆オーストラリア(グラフのみ)

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◆カナダ(グラフのみ)

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◆米国(グラフのみ)

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4.終わりに

基礎収支は、実際の取引に基づいた基礎的な需給要因となりますので、為替市場においては、短期ポジション向けの材料と言うよりは、中長期ポジション向けの材料であり、根底でジワジワと効いてくるような材料と言えます。短期的な値動きとしては、前回ご紹介したIMM投機筋ポジションや他の材料の方が影響度は大きいのですが、「気づいてみたら通貨高/通貨安になっていた」というような場合、根底にはこの基礎収支が影響している可能性が高いと言えます。ですので、FXで中長期的なポジションを構築される際には、当該通貨の基礎収支の動向についてもしっかりと把握しておきましょう。

最後までご覧いただきありがとうございました。

STAM